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とても危ない法律の誤解シリーズ①

・・・賃貸借編

弁護士法人サイオン総合法律事務所

                    所長弁護士 當  真  良  明

Q賃貸借契約書には,賃貸借期間の定めがあります。期間が経過しておりますが,明け渡しを求めることはできますか。

【質問】私の父は豊見城市に100坪の土地(宅地)を有しており,10年前に,運送会社から頼まれて建物用地として,月額10万円で貸しております。

  現在,当該土地には運送会社の倉庫兼事務所が建っておりますが,私も結婚して家族ができたので,当該土地に自宅を建てようと考えております。幸い運送会社と父との土地賃貸借契約書では,賃貸借期間は10年間となっております。この場合,私の父は,運送会社に契約書のとおり10年での賃貸借契約終了を主張することはできるでしょうか。なお,この契約書を見ると定期借地契約ではないようです。

  また,当該契約が駐車場用地としての契約であった場合はどうでしょうか。

【回答】

  本件土地の賃貸借契約が,建物用地としての契約の場合,賃貸借契約の10年の期間の定めは借地借家法により無効となりますので,10年経過しても明け渡しを求めることはできません。

  なお,本件土地の賃貸借契約が,駐車場用地としての賃貸であれば,契約書の期間は効力を有しますので10年で契約終了となり明け渡しを求めることはできます。

(写真は本文とは関係ありません)

【解説】

1 借地借家の相談

  弁護士事務所での相談の中で,借地・借家についての相談も多数に上りますが,所有者側(賃貸人側)からの相談の大半は,現在の借地人・借家人に退去してもらいたいとの相談です。

  その場合に,よくある法律の誤解が,賃貸借契約書の期間の定めがそのまま適用されるとの誤解です。

  例えば,上記の設例の場合,定期賃貸借契約でない普通賃貸契約書では期間10年と定めているのであるから,賃貸借契約は10年で終了するのでないか,10年経過したら退去させることができるのではないかという点です。

  通常の感覚で行くと,契約書に規定されているのであるから,契約書の約定のとおりになると思うのも分からないではないですが,これは誤解ですので十分注意して下さい。

2 借地借家法の規制

  まず,借地借家法の性格から説明しますと,借地人・借家人(借りる側)を保護することを主たる目的とした法律(いわゆる社会立法)であり,借地人・借家人(借りる側)を強行的に保護する規定を多数設けているということです(借地借家法9条は「この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは,無効とする。」と規定しています。)。

  その中の一つが賃貸借契約の期間についての制限です。

  結論を言いますと,借地の最短期間は30年で,借地契約で30年より短い期間を定めても,借地借家法により30年に延長されます(借地借家法3条・同9条)。

  従って,本件設例の場合も,賃貸借契約の10年の約定は無効となり,賃貸借期間は30年ということになり,30年経過するまでは明け渡しを求めることはできないことになります。

(写真は本文とは関係ありません)

3 終了に関する規制

  それでは,30年経過した段階では,確実に明け渡しを求めることはできるでしょうか。

  残念ながらこれも確実ではありません。

  借地借家法は,30年経過するなどして賃貸借期間が経過した場合でも,更新が予定されており,所有者側に「正当の事由」がない限り更新拒絶はできないとしているからです(借地借家法第5条,第6条)。そして,「正当な事由」が認められるのはかなり厳しい要件が必要とされておりますので,更新拒絶はなかなか認められません。

  結局,良く言われることですが,他人に土地を貸す場合は,半永久的に返ってこない可能性が高いというのが現状です。

4 返還請求できる場合

  以上の規制は,借地借家法が適用される場合ですが,駐車場目的の場合(建物所有目的でない場合)は,借地借家法は適用されませんので,期限どおりに返還請求できます。

また,借地借家法が適用される場合でも,定期借地権の場合は,期限どおり返還請求することができます。

  従って,土地を賃貸借する場合,これらの点を踏まえて,事前に良く検討した上で契約締結の是非を判断することが非常に大事になります。

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(写真は本文とは関係ありません)

借地借家法(参照条文)

(借地権の存続期間)

第三条 借地権の存続期間は,三十年とする。ただし,契約でこれより長い期間を定めたときは,その期間とする。

(借地権の更新後の期間)

第四条 当事者が借地契約を更新する場合においては,その期間は,更新の日から十年(借地権の設定後の最初の更新にあっては,二十年)とする。ただし,当事者がこれより長い期間を定めたときは,その期間とする。

(借地契約の更新請求等)

第五条 借地権の存続期間が満了する場合において,借地権者が契約の更新を請求したときは,建物がある場合に限り,前条の規定によるもののほか,従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし,借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは,この限りでない。

2 借地権の存続期間が満了した後,借地権者が土地の使用を継続するときも,建物がある場合に限り,前項と同様とする。

3 (省略)

(借地契約の更新拒絶の要件)

第六条 前条の異議は,借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか,借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して,正当の事由があると認められる場合でなければ,述べることができない。

(エッセイ)文明発祥の地ー「地中海」

弁護士法人サイオン総合法律事務所

                                               所長弁護士 當 真    良 明

1 はじめに

 今から20年程前の2004年(平成16年)に,調査のために初めて,ヨーロッパに行きました。ヨーロッパ旅行から帰って間もなく,書いたエッセイがありますので,そのまま,ご紹介したいと思います。その後は,ヨーロッパに行く機会がありませんでした。できればあと数年内に再訪できればと密かに希望しております。

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2 ロシア(シベリア)の大地

 まず,印象深かったのが欧州への途上で飛行機から見たロシア(シベリア)の大地です。高度約1万メートルから見るロシア(シベリア)の大地は,亀の甲羅のような印象でした。また,寒冷地のためと思われますが,木や森などの緑がほとんどなく砂漠のようでもありました。人の存在を感じさせない砂漠に雪の残ったような土地が延々と続いていました。まさに,「大陸」の風景であるとともに,寒冷地ロシア(シベリア)の自然の厳しさを感じさせるものでありました。

3 オランダの水田

 それは,まぎれもなく稲を植えた水田に見えました。

 成田から10時間余,上空から見たオランダの風景は,まさに緑の水田が広がっているように見えました。整然と四角に区画された土地,あぜ道があり,水路には満々と水がたたえら,青々と稲のようなものが育っています。

 しかし,オランダで稲作が行われているということは聞いたことがない。こんなに広く稲作が行われていたなら,観光ブックなどにも載るはずだが・・・。などと考えてるうちに空港に到着し,その日は水田か否か確認できませんでした。

 しかし,翌日には,その正体は判明しました。それは,「干拓地」での農地や家畜の放牧地だったのです。オランダは国土の相当部分が干拓地です。その干拓した土地が農地や家畜の放牧地として使用されていたのです。干拓地が,四画に区画され,水路が張り巡らされ,土地には牧草が植えられていたので,上空からは水田のように見えたのでした(ちなみに,各区画には牛や羊が放牧されていましたが,水路があるため囲いの柵は不要でした)。

 オランダは,酪農と干拓地で有名ですが,この2つは結びついていたのです。

(写真は本文とは関係ありません。)

4 「地中海」ー文明発祥の地

 旅行の5日目,6日目はマルセイユ,ニース等の南フランスの視察がありました。バスで南フランスの地中海沿岸を揺られていると,現地ガイドさんが,マルセイユから対岸のアフリカまでの距離は約400㎞であり,アフリカからの移民,入国者も多く,またアフリカ各地への飛行機の定期便が毎日就航しているとの説明がありました。

 アフリカまで400㎞。なんと近いことか。

 東京から大阪までの距離も400㎞程度はあるのではないか(ちなみに,沖縄本島から私の故郷の石垣島まででさえ450㎞あります)などと思うと,地中海は海ではなく「大きな湖」であり,1つの生活圏域であると思えました(地中海で一番狭いジブラルタル海峡は,わずか14㎞ほどであり,肉眼でも対岸を確認できるということでした)。そのことはまた,地中海沿岸で古代からいくつもの人類文明の興亡が行われてきたことが実感として納得できました。地中海沿岸では,人類最初の文明として,約紀元前3000年前にエジプト文明とメソポタミア文明が興り,その後地中海の諸島を中心にエーゲ文明,前1000年ころからはギリシャ文明,前500年ころからはローマ文明が興り,以後連綿と現代まで影響を与えています。

 地中海は海ではなく「大きな湖」であり,1つの生活圏域であることが実感でき,地中海沿岸でこのような多数の文明が次々と興った理由が納得できました。

5 花の都パリ

(写真は本文とは関係ありません。)

 最後に,今回の旅行の訪問地のうち,再び行ってみたい都市はパリです。

 ニューヨークや東京,ロンドンなども大都会であるが,パリは頭抜けて魅力的な都市であると思いました。  

 とくに,その数百年前に計画され建築された街並みは,まさに街自体が芸術品であり,フランスの華やかしころの富みと権力の大きさ,そして文化的,科学的能力の高さを感じさせます。パリが現在も文化や芸術の発信地であり続けていることが納得できるのです。

 今度は,滞在型の旅行でパリを訪ねたいと願っています。

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福岡支店を開きました!

令和6年4月1日より、福岡に支店を開所し、当事務所の弁護士井上祥平が担当弁護士として着任いたしました。下記URLから福岡支店のホームページをご覧いただけます。

今後ともよろしくお願いいたします。

弁護士法人サイオン総合法律事務所福岡支店

(2023年)冬季休業のお知らせ

2023(令和5)年12月

弁護士法人サイオン総合法律事務所

代表弁護士 當  真  良  明

 当事務所の年内の営業は、令和5年12月28日までとなっております。

 仕事始めは令和6年1月4日からとなります。

(2023年)夏季休業のお知らせ

2023(令和5)年7月

弁護士法人サイオン総合法律事務所

代表弁護士 當  真  良  明

      

      当事務所は,所員・職員の夏季休暇のため,下記の期間は事務所全体が休業と

     なりますので,お知らせいたします。

      ご不便をおかけしますが,ご理解のほどよろしくお願いします。

                    記

         2023(令和5)年8月8日(月)~8月12日(金)

(2022年)夏季休業のお知らせ

  

2022(令和4)年7月

弁護士法人サイオン総合法律事務所

代表弁護士 當  真  良  明

      

      当事務所は,所員・職員の夏季休暇のため,下記の期間は事務所全体が休業と

     なりますので,お知らせいたします。

      ご不便をおかけしますが,ご理解のほどよろしくお願いします。

                    記

         2022(令和4)年8月8日(月)~8月12日(金)

SSL認証について(報告)

平成31年1月7日付で,SSL認証を得ました。当サイトにアクセスする際,アドレスが「 https://www.saion-law.com/ 」となっているかどうか,ご確認くださいますようお願い申し上げます。

ご報告―(修正)マップの不具合について

不具合が生じていたマップの修正が完了しました。
なお,平成31年1月より,当事務所に新人弁護士が加わることとなりましたので,それに向けてこのホームページを修正する予定です。
御覧の皆様にはご不便をおかけしますが,今しばらくお待ちください。

(お詫び)マップの不具合について

当サイトのホームページに記載されている「事務所所在地」をクリックしても地図が表示されないという不具合が生じています。
現在,不具合の原因の確認及び修復をしております。ご不便をおかけしますが,今しばらくお待ちください。

ホームページを開設しました!

ホームページを開設いたしました。
皆様のお役にたつ法律事務所であり続けたいと思います。